「ただ、それだけでよかったのに。」 嘘ツキだ。わかってるよ。 だって君は、そういうヒトだから。 第二話・夢憂<7> 6歳。 母親は死亡。父親は蒸発? この頃は遠縁の親戚の家に。 七歳。 翼が本格的に生え始める。 親戚の家で虐待(?)を受ける。 八歳。 羽が教室で話題になる。 九歳。 姿勢のことを指摘され、事件が起こる。 十歳。 信用できる友達を全員失う。 親戚、死亡。一人暮らしに。 十一歳。 世間一般俗に言う”苛め”にあう。 十二歳。 引っ越す。 十三歳。 部活をはじめる。 新生活をうまくやりすごす。 十四歳。 社交的で人間関係も良好。 かなり仲のよい友人を作る。 十五歳。 友人と翼のことで縁を切る。 部活を夏の大会前に引退する。 羽に異変がおこる。 「……なんて。」 ……ぼくとは、違う。そんなこと、当たり前だ。 彼女──茜月は茜月で、ぼくとは違う絶望を抱えていた。 だけど──…… 「何、これ……」 一枚目の年表なんて、まだいい。 二枚目の”詳細”──いくらなんでも、これは…… 小学生の頃──彼女には、知恵が足りなかったのだろう。 元々頭の良かった茜月は──新生活を、うまく過ごした。 けれど──それも? それもまた──潰された? 「”不幸”──…より、なんていうんだろ……」 わからない。わからない──けれど。 ぼくは、茜月に対し、何かを思った。 よくわからない──自分でも。自分、だからこそ。 でも──なんだか。 「”助け、たい”?」 何だ、それ。 普通の人間が抱くなら間違った感情じゃないと思う──確かに。 ここまで残酷な運命、救ってやりたいと思う人もいるだろう。 だけど──ぼくは。 無理なのを知っている。 絶望の理由を知っている。 原因と結果を知っている。 なのに──なのに。 なんで、同情? 「わかんないな……」 まあ、ともかく。 茜月茜は、放って置いてはいけない、人物なのがはっきりした。