君を呼ぶ。僕の声が届かなくとも。
僕を聞く。君の耳が受け入れなくても。
きっとずっと。
君は、僕を信じてくれていると言い聞かせて。

第二話・夢憂<6>

「ぼくが無作法とかどうでもいいから。とりあえず、ほら。」
「……ケッ」

ケッ、て。おいおい……
ぼくは、明らかに不機嫌そうな千御に話しかける。

千御は、面白くないことが嫌いなのだ。
つまんないことが。
面白くないことは、しない性質なのだ。
頬を膨らませて、言う。

「なら……」
といい、言葉をためた。
……うわぁ、絶対悪巧みしてるんだろうな…
千御は、腹黒だからな…

「よーしっ!じゃあ久遠くんが”おしりかじり虫”か”千の風になって”をモノマネしながら歌ってくれたらいいよぉー♪」
「な……っお礼はカラオケでいいっていったろ!」
ぼくは、思わぬ千御の要望にあわてる。
……それはないだろ…
第一、約束破りだろ、それ……

「ウルサイなあ。あたしに物を頼める立場じゃないでしょおー。」
「………ぐっ」

我慢。我慢しろ、ぼく。
腹黒で、ドS。いうなればぼくの天敵。
だけど……こいつくらいしか、頼れる人間のいない、ぼく。
……悲しいけれど、仕方ない。

「約束するぅ?んー…”ハレハレユカイ”でもいいけどぉー」
千御が、上目遣いで見てくる。
……普通にしてりゃ、可愛いんだ……
「……わかった。踊りつき、フルで歌う。」
「ひゃっほうっ♪久遠くんノリ良いっ!美声を久しぶりに聞けるねぇ〜♪」

茜月茜。──哀れな、少女。
ぼくは、千御のいわゆる”調査票”を見ながら、思う。
この子は──茜月はきっと──友達とカラオケなんか行ったことないんだろうと。
そして──友達に、誕生日プレゼントをもらえる喜びを、久しく味わっていないんだろうと。
仕方ない。けれど、理不尽だ──……







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