僕を一目見た貴女の顔は今でも覚えている。 貴女の部品の一つ一つを鮮明に、覚えている。 だってそれは紛れもなく、僕の所為だったから。 第二話・夢憂<5> 「ホンットに、、もう!そんなんだからモテないんだってば!無作法不作法非作法!」 ……いや、あの…… 突っ込むべきなのかな……まあそれだとまた怒られるんだろうけど…… まあ、ぼくが無作法なのは事実だし…… 仕方ないし。第一、千御も悪い。 「千御。ぼくが無作法とかどうでもいいから、教えて。 教えてくれないとぼく、困るから。」 ぼくは、素直にお願いする方法にでた。 千御はぷー、と頬を膨らませたままだった。 ”ちぇ、つまんないのー”とか、そんな感じのことを思っているのだろう。 そして、数秒間そのまま固まっていた。…考えてるんだろうな… なんか、絶対ずるがしこいこと。 「よーしっ!じゃあ久遠くんが”おしりかじり虫”か”千の風になって”を モノマネしながら歌ってくれたらいーよぉー♪」 ぼくは、固まった。 「な……っ!お礼はカラオケだろ!?」 「ウルサイなぁ。はぁーやぁーくぅ、久遠くん。 あたしに物、頼める立場じゃないよね♪ あたしに命令、出来る訳ないよね♪」 千御は、滅茶苦茶可愛い笑顔で言った。 「ぐ……っ」 言葉に詰まる、ぼく。 言われてみればその通りだった。 千御の正体……それは。 情報収集に長けた謎の留年中学生。 可愛い顔とは違って黒い。 自他共に認める、ドS。 限度を知らない、無邪気な悪。 だから……逆に、頼れる。 ……というより、他に頼れるヤツがいない…… 悲しい人脈を持つぼくだった。 「しっかたないなー♪じゃあハイ、どーぞっ」 とある条件で、ぼくは茜月の情報のファイルを千御からもらうことに成功した。 ……被害は大きかったけれど。 ちなみに、ぼくは別に茜月とかのストーカーでは決してない…… ぼくがその後、どうなったかは思い出したくない事実だった。