出会いと別れを、彩る桃色。
傷つき奪い、散ってゆく白。
どうして、こんなに醜いのだろう。
どうして、こんななに美しいのだろう。


第二話・夢憂<2>

「あら。香澄水君も一緒だったなんて。新学期早々なんという悲劇なんでしょう。
最悪だわ、本当に。この学校の教師は何を考えているんでしょうね?
折角私というそのあたりの屑で腐った人間共が同じ土を踏むことさえ罪になるようなこの私が
入学してあげた、というのに。」
「うわっ……すいません。ごめんなさい。許してください──バラさん。」

容姿端麗。だけど性格最悪。
頭脳明晰。だけど冷徹最凶。
本名は、華押一宵。通称バラさん。
黙っていれば大和撫子。
口を開けば誰にも負けない。
……ツンデレなんだけどな……

そうして、バラさんは耳につけた十字のピアス(出身故の風習だとか)を揺らしながら、言う。
ピアスも高価げで、黒髪に映えて綺麗。
しかし、そんなこと言う暇もなく……
「しかも栞君も一緒なのよ。まったくふざけてるわ。冗談もいい加減にしてほしいわよ。
まあ、貴方にとってはよかったのかしら?香澄水さんと離れられてね……?
全く、貴方もとんでもない下種ね。馬鹿と阿呆と間抜けを足して0.1で割ったようね。
あ、ご存知かしら。馬鹿って当て字なのよ。
そして貴方は馬と鹿より馬鹿ね。馬鹿野郎。」
…大丈夫かな、この人を同じクラスで……
胃に穴くらい、簡単にあくんじゃないだろうか……

まあ、こんなバラさんだから友達など、いない。
というより、バラさんは誰も友達とは思わないんじゃないだろうか…
ましてや知り合いもほとんど、いない。
元々近寄りがたい雰囲気のバラさんだ、正体を知らないものも多い。
…これは正体じゃなきゃどれだけよかったか…

「おーい、バラ〜〜。その辺にしといてやれよー。なっ、折角同じクラスになったんだしよ。
仲良く仲良く。な?」
いつの間にか現れていた蒼也が、バラさんの肩に手を置いて言った。
しかし、そんなのバラさんが聞くはずもなく──
そして、それが逆効果にならないはずもなく──

「触らないで。細菌が私の体に入ったらどうするつもりなのかしら。
私、それこそショックで自殺したくなるわ。
早くメチルアルコール持ってきてくれないかしら。
迷わず栞君に飲ませてあげる。
ああ、同じ空気を吸いたくないわ、頭のおかしい栞君。
精神科に通ったほうがよくてよ。
あ、精神科医に伝染してしまうわね、いけないわ。」
「な……っ!?同じ空気を吸いたくない、はいくらなんでも酷いだろ!
それに、無理だろ!おまえもおれも、同じ二酸化炭素を出す有機生命体だろ!?」
「なんと言ったのかしら栞君。同じ?貴方みたいな100円均一で売っていそうな人と同じ?
ふざけないで頂戴、私は買えないわよ。」
「な……っ!?」
……今日も元気だな、バラさん……
毒舌と暴言が飛び交う戦場だよな……相変わらず。





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