籠の中。鎖につながれた淡い鳥。 闇の水槽。沈んだ儚い花。 それは、誰だったんだろうか。 ぼくだろうか、君だろうか? 僕だろうか、君だろうか。 第二話・夢憂<2> 結局、ぼくは伍組、永遠は肆組だった。 「残念だったねー。ま、いっか☆どうせ家でも一緒なんだし、久遠も姉離れしないとねー?」 「してるっ!じゃあ、また帰ったら。」 にこっと笑って言う永遠に、ぼくは軽く流した。 まあ、その通りだ。あいつのことだからいくらでも友達なんてできるんだろうし。 ──それだから、一部の人間が、恐れ、崇め、嫌い、好くんだろう。 そう、あいつは今まで沢山の人を蹴り落としてきた。 学問も、部活も、友達も、恋愛も。 それがまた──化け物たる、所以。 学問では以前、転校早々に年間学年一位を守ってきた人をあっさり抜いた。 信頼もあり、同情もさせずにトップに君臨した。 部活では、キャプテンをも0で倒し、一部を除く先輩に好かれ、その一部の先輩も認めざるを得ない力を持つ。 コーチにも勿論、お気に入りとして可愛がられた(途中は地獄の特訓もあったが)。実力があったからだ。 友達では、永遠を恐れて、どんなに永遠のことが嫌いな子でも、好きとしか言えない。 彼女を嫌ったらどうなるかが、多分本能的に わかっているんだと思う。賢い子は…… しかし、永遠は何も考えちゃいないのだ。 恋愛では、永遠は何かと完璧な子だったので、永遠に告白する子も多かった。 たとえ、彼女を持つ男──その彼女というのが永遠の友達だったケースもある──もだ。 しかし、誰も恨めない。彼女に、悪意はないから。 一体──どれだけの人間を泣かせてきたのか。 あいつは、本当に── 「人間としての、感情なんか……。ないんじゃないのか。」 ぼくが呟いたその瞬間、誰かがタックルしてきた。 「あたっ!」 「くーどーおっ!」 ぼくは後ろを向いた。 そこにいたのは、栗色の緑眼の巻き毛(天パ気味?)の美少年。 背は高めで、笑顔の似合うさわやか君。 ……って。 「……なんだよ、蒼也かぁ……」 「なんだって何だよー。おれに文句でもあんのかよー。」 栞蒼也。ぼくからみれば一般的には幼馴染と呼ばれる分類に入る人間だ。 「あ!ちなみにおれ伍組だからっ!一緒だな〜♪」 「うん。……そうだな。」 こいつとの縁はなかなか切れない。 まあ、いいやつなんだけどな。 永遠と同じで何でもできるやつだけど、あいつより大分人間らしい。 理由は、バカだからだ。勉強はできるのに…… 「へへっ、ちなみにバラも一緒だったしな〜。全員集合だ!」 バラというのは渾名だ。薔薇さん。本名は華押一宵という。 綺麗な黒髪の、赤色の瞳のハーフで美人。 そう、外見はすっごく綺麗なのだけれど…… 性格は、ヤバい。エグい。かかわってみるとわかる。 渾名の由来だってわかるだろう。その名がどれだけぴったりなのかも…… 多分、常人なら一ヶ月で胃に穴が開く。 「ふぅん…。薔薇さんも一緒か。」 そう呟いて、僕はもう一度クラス分け表をみた。 「……あ。」 茜月も一緒だ、茜月茜。 飛べない翼を持つ、あいつも一緒だ。