痛みが生きている証だとほざくなら。
心地良さを死んだ証だとはいえないよ。


夢鬱<14>


茜月は、斜め下を向いたまま。
かたかたと小さく震えて、歯を食いしばっていて。
心が揺らいでる──なんていうか。

気持ちが、解らない。
自分の気持ちは自分も解らない──かも、しれないけど。

茜月の瞳の光は、揺れていて。

「別に、ぼくはきみと同じだなんていうつもりないよ。
ぼくは、体があるのが普通。意識すれば消せるんだよ。
でも、茜月は違う。だろ?
茜月の翼は消えたりしない。生えてる。
……そりゃ、ぼくも色々大変だったし努力はしたけど。
茜月のようになるのが怖くて怖くて、仕方なかった。
茜月は、周りに怯えながら、立ってなきゃなんなくて…
周りの人が全員的に見えるような、そんな生活ぼくにはできないよ。」

茜月は俯いたままだった。
口はきゅっと結んでいる。話すつもりは、ないみたい。

茜月のことなんてしらない。

ぼくは──茜月のことなんて何にも、しらない。
紙面の上での情報、上っ面だけは少し見てた。

でも、茜月の事は今だって何にもわかってない。
ぼくに──……茜月の気持ちはわからない。

ぼくは、さっき消えた自分の胴体を見つけた。
今は触れられる。ちゃんと、ある。

”祝福されない贈り物”トラジェディーチルド。
イレギュラーな”人型兵器”キリング・ウエポン。

人がなんと呼んでも、それがぼくたちなんだ。



inserted by FC2 system