居場所?居場所なんてないさ。
何故なら僕は、いないから。

夢鬱<13>

「な…なに、まさか……」

茜月は、口を吊り上げてあの笑みを戻そうとしていた。
……元々、作り笑いは苦手だろうにな。
少し。小刻みに。体が、震えていた。

「言ったろ──茜月。ぼくらはおまえの仲間だって。」

ぼくは──今度は、目を見据えて、いった。
茜月はまだ、眼を丸く見開いている。

……猫みたい。
必死に相手を威嚇して強がっている、子猫。
銃はまだ、拾っていない。
いや──拾えて、いない。

「なな……なんなのよ。何それ!?
あなた──人間っ……!?」

茜月の…心とか、瞳とかから揺らぎが伝わってくる。
希望とか──汚いもの、とか。
でも、茜月は綺麗だ。すっごく。
凄く──綺麗。

「天使……じゃなかった。翼持ちのおまえが言うか?
確かに、信じがたいことだけど。だからこそぼくらは仲間だろ?」

そこで──茜月の表情が歪んだ。
大きい瞳は見開いたまま、辛そうにゆがめて。

「なあ。」

ぼくは、なだめるように話しかけた。
心に直接、問いかけたかった。

茜月の表情は偽りなくつらそうだったから、少しぼくも嫌だ。

──だいじょうぶだよ、だいじょうぶだよ──
話しかけて。
ぼくは、ゆっくり立ち上がって。

──てきじゃないよ、わかってあげるよ──
問いかけて。
ぼくは、目線を同じにして。

──傷はふさがるよ、優しくするよ──
癒すようにして。
ぼくは、声に出す。

「厳密に同じじゃない。違うからこそ、同じなんだ。
仲間なんだよ、茜月。少なくともぼくは、ぼくらはそう思ってる。」

「わ……わたしと……同じ……!?」

心が揺らいだまま、表情が歪んだまま。

それがとても、小さく見えて。

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