探し物はありますか。
探し物は見つかりましたか。

探してたものなんてあったんですか。
見つからないものなんてあったんですか。
見えないですか。


夢鬱<11>


沈黙、だった。
喜びからか、怒りからかはぼくには解らないけれど、
彼女の顔は歪んでいた。

──そりゃあ、珍しいことかもしれないけれど。
でも、そこまでするようなことじゃあないだろ?

ぼくは礼儀をわけまえてたつもりなんだけど。
すごく改まってて、わらっちゃうくらいに。

──そう。
茜月に笑って欲しかったんだ。
でも、彼女は、そう。
きっと、人に向ける笑顔がわかんないんだろ。

「ば……馬鹿じゃないのっ!」
「……さっきから馬鹿馬鹿酷いな……」

茜月は、吼えている。
見下して。泣きそうで。震えていて。小さくて……
ぼくはもう、彼女の銃に恐れを感じることはなくなっていた。
彼女が発砲することをわかっていても。

「茜月。ぼくらは、”仲間”になれるんだよ。
”仲間”なんだよ。信じて。」
「黙れっつってんだろおおおおおおっ!!」

──ああ。
この咆哮は、ぼくの言葉が茜月に届いた印だろう。
傷にしみる消毒液のように。
でも、きっときみの傷はいえる。ぼくらが、癒すんだ。
傷跡くらい、いいじゃないか。ぼくらが出会った証だよ。

そして。
彼女は引き金を引いた。

バンッ、バンッ。
消音機はつけてなかったようだ。
ぼくは、瞬きをした。──反射的に。
でも、不安も恐怖も無い。

弾丸は、ぼくの体に向かっていた。


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