回って帰って廻って返って。 そうやって、何回か染められて、春。 僕の体が何色にか染まれば、何か変わるんだろうか。 第二話・夢憂<1> 「久遠ぉーーーーーーーーーっ!遅刻するよ!?早く、起きて起きておきてぇ!」 「う……と、永遠?今、何……え!?もうこんな時間っ!?」 「そうよっ!早く早くぅ〜!」 AM7:30.ただいま七時半をお知らせします〜…って。 寝坊。そう、ぼくは寝坊したのだった。 しかも今日から高校生という大事な日に。 「……最近こういうこと多いような気がする……」 ぼくは寝起きで働かない頭を上げながら起きた。 「早くてきぱきしてよぉっ!あたし遅刻なんて絶対やだよ!?」 そういって永遠は下へ降りていった。 ぼくらの部屋は二回だけれど、リビングは一階だった。 ……永遠はやっぱり今日も元気だった。 永遠はもう準備は完璧のようでビシッと着こなした制服はもう何年も着ていたかのようだ。 ……さすがだな…… 「別に永遠、待ってなくていいよ……」 それに引き換えぼくはまだ何もしていない。 ……なんで永遠はまだぼくと一緒にいたがるんだろう…… 「酷っ!あたしは一緒に生きたいのにー!」 わかってるよ、といいながらぼくは着替えを済ませて降りる。 「眠いなぁ……」 かといって入学式をサボるわけにもいかないし…… かといって入学式でもし居眠りしたらなぁ…… 第一、入学式の日から授業あるって……酷すぎるよなぁ。 まあ、頭の良さでは県下Best3に入らないとも劣らないという学園らしいからな…… 永遠はどこでも入れるといわれたのだが結局、一番ちかい学園を選んだのだった。 ……そういうのが、あいつの天然なところなんだよな…… 下におりると、妹がいた。 ぼくらも双子なのだが、なんと奇跡的なことに妹たちも双子なのだった。 しかし……ぼくらとは少し違って外見も性格も対照的。 ……ぼくらが似すぎているのだろうか…… 髪も、顔つきもすべてそっくりなのだ、ぼくらは。 「あ!お兄ちゃんおはよう〜。また寝坊したの?後ろの髪撥ねてるよ〜。も〜ぉ、困ったなぁー。」 「おはよう。ホラさっさとしないと遅れるよ。アタシたちも忙しいの。」 まったく逆の挨拶をしてきたぼくらの双子の妹、柚子と奈津。 本当に外見も正反対だ。 柚子は、目が丸く、くりっとした二重で色素の薄い茶交じりのオレンジのショート。 性格はやさしく素直でめちゃくちゃいい子だ。 家庭的で動物にも優しく、かといって正義感も強い、絵に描いたようなかわいい女の子。 一方奈津は、かわいいというより格好いい顔立ちで目もきりっとした一重に真っ黒のセミロング。 性格もボーイッシュで女の子の友達がいないわけではないのだが、男子とばかり遊んでいる。 そして、男より強い(女子にももてる)。 その半面不器用で小動物殺しが趣味だったりしてよく柚子に怒られていた。 悪い子じゃないんだけど…… まあ、仲のよい姉妹なのでいいだろう。 ……ぼくらと違って何の因縁もなく平和で…… 二人の成績を足して割ったらものすごく中間になるし。 「あ!あたしももうすぐ行きたいんだけどな。今日、約束してるし。」 そういって柚子は時計を見た。時刻はもう45分になるところ。 ぼくは柚子お手製のスクランブルエッグを食べ終わったところだった。 「ほんとだね、遅れるよ、柚子。アタシも早く行きたいんだけど。兄貴、早くして。」 奈津も言った。 ……ついに僕も下の妹からせめられる羽目になってしまった…… 「ま、待って。わかった、もういくよ。」 ぼくはあわててパンを口に詰め込んだ。牛乳で流し込む。 ああ、柚子の朝ごはんはおいしいのに。最近ずっとコンビニで買ったやつばっかりだったから…… 「久遠ぉお〜〜〜〜!!もう、遅れちゃう遅れちゃう〜〜!」 「……行ってきまーす……」 ぼくは、靴のかかとを踏んで家を出た。 あせっていてブレザーのボタンもひとつ、外れていた。 「よかったよかった〜。さっ、行こ!」 永遠は明るくいって、ぼくもそれに同意した。 でも、ぼくの心の闇は深かった。 この化け物からぼくを救ってください。 もう永遠を基準に見られたくありません。 もう香澄水弟なんて呼ばれたくありません。 もう永遠に影響されたくなんてありません。 ぼくは、一人で歩きたい。