水槽に魚を沈めた。 魚は泳いだ。僕の手から逃げた。 水槽に鳥を沈めた。 鳥は羽ばたいた。けれど飛べなかった。 夢鬱<8> 「ははははは!」 彼女はまだ、構わず続ける。 痛々しくて──見たくない位、悲しかったけれど。 でも──目は、逸らさなかった。 瞬きすらしなかったって断言できる。 それが──そうする事が、ぼくの使命だと思ったから。 「それ何……同情!?しかも、取引でもなんでもないじゃないの! 何なの……マスコミにでも売りつけるつもりなの!? 不真面目もからかいもいい加減にして……? 言っとくけど、あなた以上に信じられそうにない人なんて居ないわ! 仲間!?仲間、なか、ま……なんて──……」 茜月は、壊れたような目つきで言った。 言いたい事を言い終えたのか──ぺたり、と座り込む。 なぁんだ。やっぱりそうだったんじゃないか──…… ぼくは、声が出そうになるのをはっ、と抑えた。 思い通りだった。──いや、そういう意味じゃなくて。 想像、通りだった。 茜月は誰かを信じたかったんだって。 茜月は誰かを頼りたかったんだって。 茜月は誰かに傍に居て欲しかったんだって。 俯いたまま、表情はわからなくて。 「……茜月。」 ぼくは片膝をついて、茜月に目線を合わせる。 ……茜月は、やっぱり小さかった。──思ってたよりも、ずっと。 滅茶苦茶細くて、小さくて。