強がりは、優しさ。 優しさは、思いやり。 思いやりは、足掻き。 足掻きは、強がり。 夢鬱<7> そのまま時間が静止してる。 止まってる。──時間が、まるで。 沈黙を破ったのは茜月の方だった。 「な……何言ってんのよ、あ…頭、大丈夫かっつーの!!」 茜月の口調は滅茶苦茶だし、表情も豹変していた。 怒っているような──悲しそう、な。 ──まあ、戸惑い、困惑、動揺が混ざった結果だと思うけれど。 人を拒絶して、人に拒絶されてきたあいつだから。 「仲間」なんて。 ましてや、「なってほしい」なんて。 彼女の耳にはなんて届いただろうか。 彼女の心にはなんて届いただろうか。 それこそ、外国語のように。 彼女はなんて訳しただろうか。 あいつは、仲間なんていらなかっただろう。 自分で──捨てた。否、捨てるしかなかった。 周りは、仲間なんて居ると思っていなかっただろう。 あいつは──捨てた。だから、周りも、捨てた。 誰も、あいつと同じ苦しみを味わうことは出来ない。 だから、傍には居られない。 似たような哀しみはあっても、同じ哀しみなんて存在しない。 ──なにがあっても、茜月を手放さない。 世界が茜月を外側に捨てようとしても、ずっと手を引いてやれる人。 ──それが、茜月に必要だったもの。 ……本当に、何も無かったらしい。 あいつはアパートで一人暮らし。友達も、知り合いもほとんど居らず。 心の支えだった陸上でさえ捨てさせられ、ひとりぽっち。 ひとり。ひとり。ひとりひとりひとりひとりひとりひとりひとりひとり。 何も無い。何も無い何も無い何も無い何も無い何も無い何も無い何も無い何も無い。 何も無くて──翼を呪って。 翼を嫌って──自分を、嫌ったんだろう。