見上げれば、曇り空が広がっていた。
目を背けて下を向けば、水溜りには雨の音。
…そういうこと。
それが僕の、罰。


第二話 夢鬱<6>


冷や汗が──額、頬、と伝っていく。
でも、平気だった。寧ろ、安心してきている。
──これならぼくは大丈夫──と。

思い通りになるのが一番怖い。
でも──思い通りになるのが一番いい。

「……そんなに怯えなくても。取って食おうって言う訳じゃないし。
ただ──ただ、お願い。」
ぼくは──瞳を見据えて、言った。
…何にも怖くない、お前なんて怖くない。
──そう、言っているように。

茜月はぼくが「怯えている」といったことに反応したけど、
すぐに直後の言葉に興味が移る。

「……──お願い?」

ああ、やっぱり綺麗な声──と、ぼくは場違いにも思った。
だけどぼうっともしてられないから、前を見る。
……どこか逃げ腰な、茜月。
ぎゅっ、と銃を握りなおした。

……怖くないよ、怖くないよ。

ぼくは、自分より茜月に言い聞かせるつもりで、頭の中で呟いた。
……君は、運が悪かっただけなんだ。
今まで、一人ぼっちすぎたんだ。
──いままでが、ひとりぽっちすぎた だけ。

──弱みに付け込むようで、後ろめたいけど。
──このために、ぼくがこんな目にあっているんだから。
──お願いだから、ちゃんとこたえて。

「その”翼”の秘密と引き換えに──茜月。
仲間に、なって欲しい」

茜月は、銃を落とした。





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