痛かったのは、傷よりもっと深い場所。
痛がったのは、脳よりもっと深い場所。


第三話 夢鬱<4>



正直、ぼくは吃驚していた。
奇想天外、予想外。

だって──追い詰めれば、折れるかな、と思っていたから。
……これで、見事にバラさんと蒼也の予想が的中したわけだ。
よかった……準備はしてて。

「……あれ、これはどうして答えてくれないの?答えて。
殺されたいの。殺していいの?それとも──わたしを、殺す?」

恐怖というより──なんだろう。
この茜月の表情に──気持ちに、名前なんてあるんだろうか。
抵抗?恐怖?激怒?逆鱗?……なんだか、しっくりこない。

「……茜月。ちょっと話を聞いて。ぼくは何も──」
「なら!どうして……わたしの弱みを握るような真似、してるの!?」

ならって……先読みしてる?…いや、出来て無いような……

「……ぼくは、きみの仲間だって。性格には、ぼくがきみを仲間にする。」

ぼくは──また、正直に言った。そう、正直に……
茜月は、一瞬驚いて──また、さっきの表情に戻った。

呆れたような。諦めたような。

「……頭の中に核ぶちこんでやりたいわ。」

ふっ──と、茜月が笑った。

可笑しそうに。嘲笑うように。

……それにしてもイメージ違うなぁ…
もっと儚そうなお嬢系想像してたのに。
あんな過去だからこそ──と思ったら、逆かぁ。

人見知りじゃなくて、信じないで警戒。
大人しいんじゃなくて、味方みたいな敵を増やしたくない。
本当……バラさんもいい所だよ。

「……ねぇ、茜月。残念だけどそういう性格はバラさん──あ、同じクラスの華押一宵だけど──
と被るから、止めた方がいいよ。そういうの、らしくないし。」

茜月は、目を見開いた。そして、細めた。
そして、数歩こっちへ歩いてきた。
今は、茜月の方が若干、目線が低い。
見上げるように──見定めるように、ぼくを見る。






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