ああ、君の声が痛い。 僕の背中に背後から刺さって、傷跡残す。 癒すのは時間じゃなくて、忘却。 第三話 夢鬱<2> 静かな教室に響く、その音。 数秒間の沈黙。 数秒間の睨み合い。 それが長く、長く永く感じる、その人物との対峙。 そして、向こうから口を開いた。 灰色の長い髪に、真っ直ぐな瞳。 ──まあ、睨まれているのだけれど。 そう、その瞳には怒りが映っていた。 「……香澄水くんだったの。」 腹の底からの怒りの声、だけれど小さいか細い声。 でも、とてつもない威圧感。 ぼくは、異様な雰囲気に少し驚きながらも答えた。 「……茜月。ちゃんと来るなんて律儀だよね。」 …まあ、来ない筈が無い、と確信していたけれど。 ぼくも結構性格悪いな、と心の中で呟く。 そんな中で、茜月の表情はますます険しくなっていった。 ああ、美人なのに──と、ぼくはまた心の中で呟いた。 一度、声に出して言ってみようか──なんて。 しかし、茜月は微動だにせず、ぼくを睨み続けて、言った。 「茶化さないで。わたし…結構驚いているのよ。真剣なの。」 そして、言葉に出すのも汚らわしい、といったような 苦虫を噛み潰したような表情で、言った。 「……わたしの、わたしのアレを……どうして?」 茜月の表情は、険しいというより暗くなっていった。 …ああ、やっぱりそうだったんだな、とぼくは確信した。 よかった、行動して。 彼女は──茜月茜は、やっぱりぼくらの仲間なんだ。 「話そうか、その事。だからほら、座って。」 茜月は、渋々座った。 ぼくは教卓の上に座っているのだが(不良とかじゃなくて、いい位置だから) 彼女はパイプ椅子を教卓の下から出して、ぼくの斜め前に座った。 「…質問は?」 ぼくは、茜月に向かって言った。 そんなの、何かはとっくに解っているけれど。