痛い痛い、助けて。 と いえるひとと、いえないひと。 どちらが、幸せなのだろうか。 否──言ったとしても。 相手がいなければ、同じこと。 第三話 夢鬱<1> ”作戦”の決行日── 思い立ったが吉日、その言葉を無視したぼくは、 今日──昨日のぼくから見れば明日── を、決行日にしたのだった。 休み時間。 薔薇さんは、本を読んでいる。 今日は──えっと、”よくわかる現代魔法”? なんじゃそりゃ…… 蒼也は、友達と喋っている、笑っている。 ちなみに、薔薇さんはそれをたまに横目で憎憎しげに見ている。 蒼也はあれでいい──そう、思う。 それが、ぼくの知ってる蒼也だ。 そして茜月──茜月は、何もしていなかった。 窓際の席。そこから、ぼーっと空を見ていた。 いや──違う。空じゃ、ない。校庭だ。 校庭で走る生徒を、見ていたんだ…… 自分と、重ねてるんだろうか… その眼差しが、いやに悲しい。 「久遠、怪我すんなよ?」 授業がすべて終わり──部活に行くところの蒼也にとめられた。 「わかってるって。大丈夫だよ。」 「ほんとかよ?久遠、おまえ自分が無茶する癖あるの自覚して無いだろ……」 呆れたような顔で返事したぼくに、蒼也はもっと呆れた顔だった。 まあ、ぼくのことは多分蒼也の方が良くわかっているんじゃないのかと思う。 「まあ、平気だと思うよ。結果が良くなるように努力する。」 そういうと蒼也は、ふっ、と笑った。 …格好良い、というより綺麗なんだよな、蒼也って。 女子だったらさぞもててたんだろうな… そんなこんなで、放課後の教室。 誰も──いない。ぼく一人。 部活やら、遊びに行くやら、家に帰るやらでもう誰もいない。 そして木霊のような、部活している同級生や先輩達の声も聞こえてくる。 ──一人は、嫌いじゃない。どちらかというと、好きな方。 今までもこれからもずっと、そうだ。 「そろそろかな…」 まさしく、そのときだった。ぼくが呟いたその瞬間をはかったように。 教室の、ドアが開いた。